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阿波の局の屋根裏部屋

阿波の局が書き散らしてきた駄作品をかき集めた書庫。 初めての方は 「ごあいさつ」からどうぞ。 こちらに収納されていない作品は阿波の局のブログhttp://blog.goo.ne.jp/awa1993または阿波の局の隠れ家http://blog.livedoor.jp/awanotubone/にございます。

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それでも隣で 10

空飛ぶ広報室 二次小説

高橋さん、そろそろ部屋へ戻りませんか?

ここではちょっと話しにくいこともありますし…
もう少しお話したいんです。


食事はもういいの?あまり食べてないじゃない。


いつもこんなもんなんです。でも、もう少し考えて食べないといけないですよね。若くないですから。


あら、リカさんが若くなかったら私たちはどうなるの(笑)
まあ、リカさんの場合は、これからのことを考えて食事はしっかりとしなきゃいけないことは確かよね。
美味しいものにこだわるのもいいけれど、食事は頭でしなきゃだめよ。

味噌汁取ってきましょ。一緒に。それいただいたら部屋に行ってゆっくり飲み直しましょうか。

はい。


リカと保代は連れ立って席を立った。


疲れている時とか食欲のない時は、味噌汁を具だくさんにして飲むといいわよ。
冷凍のホウレンソウとか豆腐とかおくらとかあるでしょ。
そういうのを買っておいて、味噌汁はインスタントでもいいから。
本当は出汁を取ってちゃんとした味噌を溶いて作りたいところだけれどそうもいかないときは便利なものを活用してね。

ここのも具がほとんどないから、サラダバーのおくらとわかめとかぼちゃをいただいて、はい、具だくさん味噌汁の出来上がり!どうぞ。


あ、ありがとうございます。


子どもたちと一緒の時こういうことやるとね、やりすぎ!って怒られちゃうんだけど。

私、昔からあまり丈夫じゃなかったから、野菜が不足するとてきめんに調子が悪くなっちゃうのよ。だから、ついね。



じゃ、部屋に行きましょうか。売店でお酒買っていきましょ。


私の部屋でいいでしょ。えっこにはテレビ終わったら来るように言ってあるから。



プシュッと缶を開け乾杯する。


ねえ・・・、どうしてリカさんは会いに行かないの?
その人、「連絡はしません。」って言ってきただけで「連絡しないでください。」って言ったわけじゃないんでしょ?
忘れられないのなら、会いに行けばいいのに。


「幸せになってください。」ってどういう意味だと思いますか?私には…わからないんです。

わかりたくないのかな。むしろ。

もう、あなたには関われない。関わりたくない。だから、忘れてください。っていう風にしか思えなくて。


メール、何度も読み返しました。


何度も返信しようと思いました。


どういう意味ですか。私からメールしたらダメなんですか。会いに行っちゃだめですか。って


でもできませんでした。


もっとはっきり拒絶されたらと思うと怖くて…



嫌われたとは思いません。きっと、私のためを思って…いざというとき傍にいられないから…危険な仕事だし、だから・・・だと。



でも、・・・自衛官だって家族いるじゃないですか。好きな人と結婚してるじゃないですか。

恋愛も、結婚も難しいかもしれないけど…


私も…仕事をやめようとは思っていません。確かに、東京を離れるのは難しいです。


それでも・・・私は隣に居たかったんです。隣でずっと見ていたかったのに…


うちの長男もね、自衛官なの。海だけどね。だから、自衛官の考えることっていうか思考回路?はすこしはわかるつもり。

海なんかは、いざという時どころかいったん船に乗ったら何カ月も帰ってこないわけじゃない?今は海外にもいくわけだし。
だからだと思うんだけど、家族のことはすごく気に掛ける。そういうふうに学校の頃徹底的に仕込まれるのよ。

うちのは中卒で学校に入ったから生徒っていうんだけど、学校にいる間、江田島のね昔の海軍兵学校があったところ、地震とか、大雨が降ったとかそのたびに「大丈夫だった?」って必ず連絡が入ったわ。教官に言われるみたい。実家が大丈夫か確認しろって。


もちろん、その方の人柄もあるんだろうけれど、相手のことを先に考えてしまう、そういうふうになってしまうんだと思うの。
大事だと思えば思うほど。


松島で被災されたのよね。出張中に。よほどひどい光景を目の当たりにしたんでしょうね。



息子さんも災害支援に行かれたんですか?


たぶん、行ってないんじゃないかしら?わからないわ。仕事のことはほとんど言わないから。私も聞かないしね。


私ね、息子が自衛隊の学校に入ったころ、すごく悔しい思いしたの。

同級生のお母さんにね「心配じゃない?自衛隊って、海外派遣されることもあるんでしょ。」って。
わざわざ戦争に息子を送り出す愚かな母みたいな言い方されたの…

確かに平和維持活動に派遣されることはある。

でも、そういうのは志願制なのよ。
希望しないのに行かされるなんていうのは絶対ないし、海外派遣で死亡した隊員ってゼロなの。
そういう事実も知らないで、まるで戦争しに行かされるんでしょ。みたいな・・・

もちろん、紛争に絶対巻き込まれることはないないとは言い切れないけれど。
私は、人と国を守ることを仕事に選んだ息子のことを誇りに思ってるわ。だから、新聞に投書したの。

自衛官は確かに危険な仕事かもしれない。紛争地帯に派遣されることもある。
世の中には、危険な、命がけの仕事はたくさんある。そういう仕事をしている人の家族は、危険だからとその仕事を辞めるように言うのだろうか。
自衛官を志したからと言って戦争を肯定しているわけではない。
人を守る仕事を選んだ息子を私は誇りに思う。・・・まあ、そんな投書ね。


ああ…私も耳が痛いです。

私も…空井さんと仕事をし始めたころ「戦闘機は人殺しのための機械だ。パイロットは殺人願望がある。」なんて非常識なこと言ってしまって・・・


そう。そんなことがあったのね。


空井さんに「人を殺したいなんて思ったこと一度もありません!」ってすごい剣幕で言われてびっくりしました。
自分じゃ、ひどいことを言ったつもりなんて全然ないのでなんで私怒鳴られなきゃならないの?って


そう、その同級生のお母さんだって私がすごくムカッとしたなんてきっと想像もつかないんでしょうね。

心配して言ってくれたつもりなのよ。



ねえ、リカさんも震災の時しばらく家に帰れなかったんじゃない?


はい、報道にかかりきりで家に帰れたのは五日目でした。

でしょう?いざという時家族の元に帰れない人なんてあの時はいくらでもいたのよ。

友人に警察官の奥さんがいるんだけど、一週間帰ってこなかったって。
その間、連絡は全然なし。JRにお勤めのご主人だって三日帰ってこなかったって。


JR?


あの時、仙台駅も大変だったでしょ。
あの日の夕方から夜は、駅前のペデストリアンデッキに人があふれて危険な状況だったんですって。
一晩中その整理に当たってたって。将棋倒しになって死者でも出たら大変なことじゃない?

みんな多かれ少なかれ、東北に住んでいる人、関わりのある人は何かしら大変な思いをしているんだと思う。

起きてしまったことはもうどうしようもないじゃない。

今更関わりを絶ったところで何もなかったことにはできないの。

うちの子どもたちだって、確かに震災が無かったらもっとうまくいっていたかもしれないと思うことはあるわ。
進学とか就職とかね。

でもそんなこと考えたってどうにもならないんだし、前に進むしかないじゃない。

失敗したって、またそこからやり直せばいいんだから。
やらないで後で後悔するより、やってみて、うまくいかなかったらやり直すことの方が私はいいと思うの。

苦労したことは全部いつか役に立つはずだし、役に立たせてみせる!ぐらいの気合で生きなきゃいけないなって思うようになったわ。年を取って良かったなって思うことはそれよ。
そういうふうに考えられるようになったこと。

ダメだったときはいったんは落ち込むんだけどね。
ふふふ。
おばさんは、しぶといから。

あ・・・、お酒なくなっちゃったわね。
リカさん、お願いしてもいいかしら?
ついでにえっこに声かけてきて。
早く来ないとお酒なくなるわよって。

はい、じゃちょっと行ってきますね。


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それでも隣で 9

空飛ぶ広報室 二次小説

「そろそろリカを起こしてくるわね。私、見たいテレビがあるからってことで戻ってこないからリカをよろしく
後でゆっくり部屋飲みしましょ。」

「ん、わかった。」

瑛子が部屋に戻ると、リカは起きて髪を撫でつけているところだった。

「起きたのね。高橋さんがレストランで待ってるから行ってらっしゃい。」

「お母さんはもう食事すんだの?」

「まあ、だいたいね。食べたいものは食べたし、まだちょっと飲み足りないけど、それは後で。
見たいと思っていたテレビの録画予約忘れちゃったのよ。それ思い出して。」

「せっかく高橋さんに会いに来たのに!悪いじゃない。戻らなくていいの?」

「いいのいいの。そんな気を使う間柄じゃないんだから。一人で待ってるんだから、早く行って!」

なんだかなぁ。仙台まで来て、見たいテレビなんて。わがまま母め✊

「高橋さん、すみません。お1人にしてしまって。」

「いいのよ。まずは食べたいもの取ってきて。人気のあるメニューは早い者勝ちだから。飲み物はビールでいいかしら?」

「はい。ありがとうございます。じゃ、ちょっと見て取ってきますね。」

「結構メニュー豊富ですね。私、あんまり食べられないのでバイキングだと嬉しいです。好きなもの少しずついただけますものね。デザートも何種類かあるし。」

「じゃ、改めまして。かんぱ~い。ようこそ、仙台へ。」

「なんだかすみません。急に押しかけておいて、録画しそこなったテレビ見るとか。勝手に部屋に戻ってしまって。

うちの母って昔からそうなんですか?」

保代は笑顔で首を振り否定した。

「えっこは、リカさんのお母さんは高校生の頃から気遣いのできる人で、いっつもみんなに頼られて面倒見る側よ。

それができる人だし、断れないからいつも引き受けちゃって。申し訳ないと思いながら、私なんかいつも助けてもらってばっかり。

ありがたい友達なのよ。

震災の時もね、主人、ちょうど東京に出張だったの。最初は工場とか本社の会議室に泊まらせてもらってたんだけど、ホテルも取れなくて困っていた時に偶然あなたのお母さんと逢って、会社の人と一緒に二日もお世話になったのよ。本当に助かったわ。」

「ご主人は母のことご存じだったんですね。」

「ええ、私たちが結婚したばかりのころ-そのころは東京にいたの私たちも-社宅に訪ねて来てくれたことがあって、それ以来うちの旦那はあなたのお母さんのファンなのよ。美人だし知的で気遣いもあってって。もう、べた褒め。

旦那があなたのお母さんに会ったのはそれ以来なんだけど、ちゃんと覚えていたんだわ。えっこ、若くて変わらないしすぐわかったみたいよ。男の人って美人に弱いから。」

「ただ、ご主人がリカさんのお父さんが亡くなっていることは旦那も知っていたから遠慮したんだけどね。未亡人の家に、非常時とはいえ他人の男が泊まるなんてできないじゃない。

そしたらえっこは、一人じゃまずければ同僚の方も一緒にって。困っていたのは確かだったから結局お言葉に甘えたんだけどね。

でも、あの時は東京だって大変だったんでしょ。ありがたかったけれど申し訳なくて。

人の面倒は見るくせに自分は人を頼るのが下手で…昔からなのよ。あなたのお父さんが亡くなってからだって私や仲間に愚痴なんかこぼしたこともないし。

リカさんもそうなんじゃない?辛いことがあっても一人で抱え込んじゃうタイプ?」

「いえ、私は自分のことで精いっぱいで。仕事では、立場上後輩を指導するようにはなりましたが、それは仕事だからできることで。

でも、人に甘えるのが下手なのは母譲りかもしれませんね。そういうところはあるかもしれません。

母は、高橋さんを私に会わせたかったのでしょうか。」

「そう思うなら・・・心配かけるからって、お母さんにも言わないで誰にも言えなくてしんどくなっていることがもしあるなら・・・

私なんか吐き出す相手としてはいいんじゃないかしら。全然知らない間柄ではないけれど、この後あまり顔を合わすこともないでしょう?しゃべってしまって気まずいとか言う心配はないし。

ああ・・・ただリカさんのお母さんに情報漏えいするという可能性は否定できないけれど!(笑)」

「あの・・・、お聞きしたいことがあるんです。こんなこと聞かれるのはうんざりとか不愉快だったらごめんなさい。

高橋さんは、震災で被害には遭われなかったんでしょうか。」

「我が家はね、お陰様で。仙台市内と言っても山形に近い方だから津波被害は全然なかったから。」

「そうですか。よかった。あ、すみません。よかった、というのも変ですね。」

気にしないで、というように保代は首を振った。

「今回の震災は、津波の被害が大きかったでしょ。建物とか道路とかの被害は30年前ぐらいにあった宮城県沖地震の時の方が被害は大きかったようよ。

宮城県沖地震の時は、家の中の物倒れなかったものはなかったんですって。テレビとかタンスとか。ブロック塀もずいぶん倒れたっていうし建物もずいぶん被害が大きかったらしいわ。

それに比べれば、まだね。我が家も、壁に少しひびが入ったくらいで修繕も必要なかったくらいだから。お皿とかは落ちてずいぶん壊れたけれどね。家族もみんな無事だったし。

ただ、ご近所でも地盤の良くないところに当たったお宅は被害が大きかったり、ご親戚とかご実家が沿岸部の方がいて、そういう方はやっぱりお身内を亡くされている方がいる。海の傍には行きたくないって。家ごと流されて、まだ見つかっていないって…気の毒でね。

高校の同級生は、私もダメだって思っていた人もいたみたい。

東京の方では、沿岸部の津波の映像が繰り返し放送されたでしょ。仙台市といっても広いんだけれど、土地勘のない人にとってはわからないじゃない。電話も通じないし。

えっこも心配してくれていたみたい。旦那とはメールで当日の夜までは連絡が取れていたから無事なことはわかっていたからね、旦那と逢って無事なことがわかって安心したみたい。」

「そうだったんですね。私は、放送する側でずいぶん悩みました。

視聴者からも被害が大きいという報道や映像ばかりで、不安をあおるばかりじゃないのかって。そういう意見の電話とかメールとかも局には結構来てましたし。」

「で、リカさんはどうして我が家の被害のことを聞きたかったの?今日こうして会ったからあいさつ代わり的な?それとも、報道する側として現地の被害の実態の一例を聞きたかったのかしら?」ん?と顔を覗き込むように尋ねられリカはうっと詰まった。

「私…松島に知り合いがいて…、空幕広報室を担当していた時に帝都テレビの窓口をしてくださった方で・・・3/11に、あの日に会うはずだったんです。前日の10日、お蔵入りになっていた取材の映像が番組にできることになって「ご挨拶に行きます」って電話したら『来ないでくださいって』・・・」

保代はえ?という顔。

「私、嫌われたのかと思いました。私、何かした?って一瞬思って、そうしたら『今日、松島にいるんで。今日来られたら僕が稲葉さんに会えないじゃないですか』って。おかしいですよね。話の順番。そういう人なんです。本当に…なんなの・・・

だから『明日伺えばいいんですね。じゃ、明日』って。電話切って、それきりです。」

「会ってないの?」

「はい。」

「連絡は?メールとか、電話とか。」

「地震の後すぐメールが来ました。『自分は、無事です。』それだけですけど。

その後しばらくは、3カ月くらいは私から時々メールしました。反ってくることは稀でしたけれど。それでも・・・支えでした。

最後に『松島に移動することになりました。もう連絡しません。・・・幸せになってください。』・・・それきり連絡はありません。私も…できませんでした。」

それでも隣で 8

空飛ぶ広報室 二次小説

ちゃぷん・・・

肩まで湯につかり、壁にもたれかかって目を閉じる。

柔らかな湯が肌に心地よく、身体だけでなく固く縮こまった心まで柔らかく解れていく気がする。

熱めの湯だったが、露天風呂は開放感があり頬に当たる外気が心地よく息苦しさはない。

それでも、やはり長くは浸かっていられず洗い場に移動し丹念に体を洗い清める。

「お母さん、先上がるね。普段シャワーばっかりだからのぼせちゃったみたい。部屋で休んでる。」

「ん、わかった。鍵、フロントに預けておいて。もう少しゆっくりしていくから。」

お先に失礼します、と高橋さんに声をかけてリカは先に上がった。

部屋に戻ると、湯疲れをしたのか、気怠さを感じる。母達が戻るまで少し横になろうと押し入れから枕を出し座布団を並べた。

なんだか眠いかも。ずっと忙しかったから、温泉に浸かって疲れが出たかな…などと考えているうちに眠りに落ちた。


「ただいま~、あ~いいお湯だった。

あら、リカ寝ちゃったの?」湯上りで火照っていたからだろうか、浴衣のままで寝ているリカに丹前をかけてやり、冷房を緩めに切り替えた。

少しすると、コンコン、とドアとたたく音がする。

ドアをかけると高橋がおり「そろそろご飯行かない?」と聞いてきた。

「ごめん、リカ寝ちゃってて、起こしてみるから中に入ってちょっと待ってて。

「リカ、ご飯行かない?」トントン、と腕をたたいてもリカは目を覚まさない。

「なんだか起きないから、先に行こうか。もう少し寝かせておくわ。バイキングだから、時間内に行けば大丈夫よね。」


食事会場に行き、それぞれ食べたいものを取って席に着く。カンパーイとグラスを合わせる。

「あ~美味しい。こんな時間に温泉に浸かってビールなんて、最高ね。」

「ほんと、贅沢。たまにはね、母も贅沢しないと。な~んて、私は独身貴族だから、やろうと思えばいつでもできるんだけど、一人だとかえってしないものよ。」

「そうなんだ。私なんか、相変わらず旦那の専属運転手だから帰ってくるまで飲みたくても飲めないもの。
まあ、最近は年取ったから昔みたいに遅くならないけどね。」

「毎日送り迎えなんて偉いよね。いい奥さんだ。」

「働いてないからね。それがお役目だもん。さすがに、子供が小さいころ乗せて夜中の12時に迎えとかきつかったけど、若いからできたんだろうね。
でも、えっこはいいね~、きれいで優しい孝行娘がいて。羨ましいわ。」

「やっちゃんのとこだって娘さんいるじゃない。」

「いるけど、リカさんみたいに、休みの日に母に付き合って旅行に連れて行ってくれるような優しさはない、厳しい、娘です。ぐすん。

リカさんだったら、お休みの日は彼氏と過ごしたいでしょうに。」

「…と思うでしょ。違うんだな。なんだかね、仕事が恋人?みたいな状況らしいんだわ。想っているというか、忘れられない人がいるようなの。私には何も言わないからよくはわからないんだけど。
ここしばらく、そう一年半くらいかな、私のところにも顔見せないでずっと仕事ばっかり。

だからね、連れてきた。その…忘れじの君、松島にいるらしいの。自衛官なんだって。」

保代がな~るほど、という顔をする。

「明日、会いに行くかどうかはわからないけれど、もしよかったら、やっちゃん、話聞いてあげてくれないかな、と思ってさ。

知らない人のほうが話しやすいってことあるじゃない?自衛隊のことも普通の人よりは、ね。わかってるし、さ。」ね、お願い。と拝む。

「えっこに頼まれたらいやって言えないわよね~。それにしても、やさしい母ね。」

「誰に似たんだか、意地っ張りでかわいげのない娘だから。仕方ないの。」

クリスマスに願うこと 阿波の局バージョン 1

クリスマスに願うこと

「まぁ可哀想に…泣くほど辛いのに無理に笑って自分を虐めてはダメよ。
もっと自分を大切にしなくては・・・」

「いいんです。私なんか。
大切な人の幸せも祈ることができないしようがない人間なんです。

誰の役にも立てない・・・いいえ、むしろ私の存在そのものが周りの人を苦しめてしまう・・・

どうして・・・私は、何のために、どうしてここにいるんだろう・・・


そうか・・・

モミの木が見つかったら、静かに誰にも気づかれずに消えていなくなれますようにって祈ればいいんですよね。」パク・ハは苦く笑った。

「そんな願い、叶わないわよ。」ソンさんは、静かにでもきっぱりとそう言った。


「どうしてですか?ちゃんと願えば、ソンさんが教えてくださったとおりに願えば、何でも叶うんですよね。ソンさん。」

「本心ならね。
でも、心からの願いでなければ、叶わないわ。

だって・・・、本気で願っていることなら絶対諦めないでしょ。


願い事や夢って、誰かに、サンタクロースに叶えてもらうんじゃないの。
自分の力で、自分の思いの力で叶えるものなのよ。」


「嘘だったんですか?あの話・・・。」明らかに落胆した声で問うパク・ハ。
ソンさんに対し理不尽な態度とは分かっていても、攻めるような眼差しになってしまう・・・

「嘘じゃないわ。

私に教えてくれた人はこう言った。

願いが叶わないのは、その人自身が心のどこかで無理って諦めているからだって。

モミの木を探したり、お店を探したり・・・なかなか見つからないでしょう?・・・そうやって面倒な困難なことなのに、願い事のために一生懸命動いているうちに自分の本心に向き合うようになる。
本気になる。諦めなくなる。だから叶うんだって。

モミの木や、オーナメントに力があるわけじゃないの。

この話はね、本当の宝、夢を叶える力は自分自身の心の中にあるんだっていうことを気づかせるための仕掛けのようなものなの。

パク・ハはちゃんと自分の心に向き合った?

消えていなくなりたいだなんて・・・パク・ハ・・・あなたは今までどんな悲しい思いをして生きてきたの・・・?

・・・かわいそうに・・・辛かったんでしょうね・・・。」

ソンさんは、パク・ハの頬に優しく触れると零れ落ちようとしている涙を優しくぬぐってくれた。

「我慢しなくていいの。

泣いてしまった方がいい時もあるのよ。
思い切り泣けば・・・、そうしたらすっきりする。
曇りが晴れて、自分の本当の心が見えてくる。」

にっこりと優しく微笑むソンさんの目と出会って、パク・ハの堪えていたものが切れた。

泣いてしまおう。
ソンさんなら、私の涙を全部受け入れてくれる。


堰を切ったように泣くパク・ハの背をソンさんは黙って優しく撫でてくれた。


「オーナメントを売ってくれた店の店主が言っていたわ。

願い事なんて、当人は大層に思っているが大概は些細なことなのさ。

目の前にいる人にしゃべってみればいいんだ。それで大半は解決する。

やってみなければ、ダメかどうかわからんじゃないかって。

そういわれて、私はああ、そうだって思った。
何にもしないうちから、できない理由を数えていただけなんだって気づいた。
どうしても叶えたいことなら、叶うまでやり続ければいいだけのことなんだって気づいたら、なんだかそれだけで気持ちがすっと楽になって・・・、あっさり叶ってしまったの。

おかしいわよね。

何であんなに深刻に悩んでいたのかしら?って不思議に思うほどだったのよ。」


理屈では分かる・・・
でも・・・納得したくない気持ちがどこかにあった。

パク・ハは啜り上げながら、

「ソンさんは・・・どうしてそんなに私に優しいんですか?
私は何もお返しできないのに・・・」反論もできなくて、まるで子供が駄々をこねるように俯いたまま言った。


それは、暗にもう聴きたくないという意思表示をしたつもりだったが、ソンさんはまるでそれに気づかなかったかのように続ける・・・


「どうしてかしらねぇ・・・
パク・ハは若いころの私みたいだから・・・かしら。

ねえ、パク・ハ・・・私はね、苦労した人ほど幸せになる権利があると思ってるの。

なぜかというとね、こんなに苦労ばかりしていた私でもこんなに幸せになることができたんですよって周りの人に示して証明するため。

そうして、今苦しんでいる人を励ますの。
私もこんなに幸せになれたのだから、あなたも諦めないで。一緒に幸せになりましょうって・・・。

それがあなたの役目。それが私に対するお返し。


ね、勇気を出して。
あなたの本当の気持ちをあなたが見つめている人にぶつけてみるの。
もう喧嘩しちゃったんでしょ。いいじゃない、嫌われたって。今より悪くなることはないじゃない。

消えていなくなれるだけの覚悟があるのなら、あたって砕けろ・・・よ 」


パク・ハはいつの間にか泣き止んで顔を上げ、ソンさんをしっかりと見つめていた。

目には光が戻り、青ざめていた頬も心なしか赤みが差したようだった。


「ソンさん、わたしやってみます。

もうどうせ嫌われてしまったんだし、もともと聞き分けのいい淑女だなんて思われてないんだし。

あたって砕ける・・・ですよね 」


「そうよ、その息。

じゃ、携帯出して。今すぐ電話よ。」

「えっ?今ですか  ソンさんのいる前で? 」

「そうよ。もちろん。

私が帰ったらやっぱり・・・ってなるでしょ。後ろ向きの心が出てきちゃうのよ。

恥ずかしがっている場合じゃないの。ふぁいてぃん 」


「・・・わ・わかりました 」

意を決したようにパク・ハは携帯を取り出すと「テヨンさん」と記されたところをタッチした。

お願い・・・電話に出て。テヨンさん・・・


「あ・・・テヨンさん?パク・ハ・・・です。さっきは・・・」


ソンさんはそれを見届けると、静かに店を後にした・・・

クリスマスに願うこと 阿波の局バージョン 0

クリスマスに願うこと

このお話の第1話の冒頭には↓このような但し書きがありました。

moonさんの クリスマスに願うこと を勝手に改ざんして阿波の局が続きを書いてしまった・・・という大変申し訳ない3次小説(?)です。

moonさんのお書きになっている元の物語とは違った展開になっている場合がありますことをご了承ください。


クリスマスに願うこと8 より続く



このお話は元々、アメーバブログでmoonさんという方が書いていらっしゃった「クリスマスに願うこと」というオクセジャ2次小説をもとにして、結末が待ち切れずに私が勝手に暴走してしまったというものです。

残念なことに、私がこんな失礼なお話を書いたことも一因なのかもしれませんが、moonさんはブログを閉じられてしまい今そのお話を読むことができません。

記憶にあるものを頼りに、moonさんの8話分のお話のあらすじを阿波の局バージョンのプロローグとして書き起こしておきたいと思い立ちました。

2018.2.28

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