「屋根部屋の皇太子2次小説」
それぞれの時 朝鮮にて

胡蝶 2

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「胡蝶、世子様より、夕餉が終わったら書の練習をするゆえ、お居間に参るようにとのお言葉じゃ。」

「はい、かしこまりました。」


「胡蝶はいいわね~、世子様直々に色々教えていただけて。うらやましいわ~」

「はい、でも、皆様もこれまで世子様にお教えいただいてこられたのではないのですか?

私にしてくださるように、家臣にお教えになるのがお好きなのでございましょう?・・・」

世子様はご教授が趣味・・・胡蝶はそう思い込んでいた。


「あら、胡蝶は特別よ。

だって、ピングン様がいらっしゃったときは、私たちがお側に寄って親しくお話申し上げることなどできなかったもの。ね~」

「そう、ピングン様はおしとやかな方だったけれど、世子様の側には決して女人を近づけないようになさっていらしたもの。

でも、世子様はあのようにお勉強好きな方でしょう?

ピングン様は余りそちらのほうはお得意ではなかったから、プヨン様をお呼びになってお話し相手になさってたのよね?

プヨン様なら、安心だから・・・。」

「プヨン様って?」

「ピングン様の妹様。

賢い方だったけれど、お顔に傷がおありになって。

何でも、お小さいころに不注意でやけどをなさったとか。

だから、いつも顔に覆いをなさっていたわ。」


(安心って、顔に傷がある女には、手を出さない・・・って事?)

「最近、流行り病で亡くなったそうだけれど。」

「あら~、ご存じないの?

ここだけの話だけれど、実は芙蓉池で亡くなっていたのは、ピングン様じゃなくてプヨン様だったんですってよ。

あれは事故ではなくて、世子様を暗殺しようとした事件だったんですって!」

「ええ~、そうなの~

じゃあ、前左議政様ご夫妻は、ピングン様の死を悲しまれて隠遁なさったって、嘘なのね。」

「ええ、前左議政様が毒を盛ったらしいわ。

そのことにプヨン様が気づかれて、世子様を助けようとお身代わりになったんですって。

でも、自分が死んでしまったら、陰謀がばれてしまうでしょ。だから、ピングン様と入れ替わって事故に見せかけたんですって。

前左議政様は、このことを覆い隠そうとなさったんだけれど、世子様が事実を突き止めてしまわれて・・・

だから、世子様はプヨン様の気持ちを思われて、いまだに妃をお迎えにならなんだわ・・・きっと。

世子様も、実はプヨン様のことが好きだったのかも・・・ね。」

「じゃあ、前左議政様一族は処刑されてしまったのね。」

「前左議政様とご子息はね。でも、他の者たちは、温情で許されたという話よ。

ファヨン様と母君もどこかで幽閉されているとか。

だから、暗殺事件だったという事実を知らせず、隠遁したという噂を流したんでしょ。

まあ、噂だけれどね。」

「大変!女官長様だわ・・・聞かれた?」

慌ててみんな口をつぐんで食べだした・・・。


「これ、いつまでしゃべっておるのじゃ。

奥での噂話は厳禁じゃぞ。口を慎むように。

食事が終わったならば、それぞれ仕事に戻りなされ。」

「はい。申し訳ございませぬ。」



プヨン様・・・どんな方だったんだろう・・・?

世子様はその方のことを想っていられて・・・私はその方のお身代わり・・・?

自分のことを少しは女人として見てくれているのかもしれない、という淡い期待を抱いたことが恥ずかしく思えた。

バカみたい・・・

何を勘違いしているのよ・・・

今朝、世子様がいつもと違うように思われたのは、ただの思い込みだったのだと思った。


「胡蝶でございます。遅くなりまして、申し訳ございません。」

「ん、入れ。」

イ・ガクはすでに何か書いていたらしく、顔も上げずに胡蝶を招じ入れた。


静に筆を運ぶ姿は、いつもどおりのイ・ガクと変わらなかった。

「失礼いたします。」

「手本はそこにある。書いてみよ。

漢詩、と思ったのだが、この間の文の文字が余りに拙かったのでな・・・。」

「申し訳ございません。」胡蝶はうなだれた。

一生懸命書いた文だったのに・・・世子様にとって、私はやっぱりただの幼い子供・・・


書・・・と聞いて弾んでいた気持ちはぺしゃんこになってしまった。

胡蝶は、ことさら書が好きでも得意でもなかった。

でも、書の練習ならば・・・イ・ガクを見ることができるから、嬉しかった。

他の勉強のときに、ぼうっと顔を眺めることなどできはしなかったが、書ならば、手本を書いているときや、胡蝶の書いたものに朱を入れているときなどは遠慮なく見ることができる。

胡蝶は、イ・ガクの筆を持つ大きい手が好きだった。

世子様の指はとても綺麗・・・

ちらりと顔も盗み見たり・・・

そして、時には直接手にとって教えてくれるときもあった。

イ・ガクの手はとても大きくて、・・・頭の上から声を掛けられると、どきどきした。

近くに来ると、いい香りがほんのりとして心地よかった。

亡くなったお父様の匂いに似ている・・・気がした。


なのに・・・今日は「もう一度。」「もう一度・・・」とおっしゃるのみで、書いたものに朱も入れてくださらず・・・

胡蝶は、黙々と書くしかなかった。

これじゃ、お手さえ見られやしない・・・もう・・・

世子様の、バカ・・・胡蝶は心の中で毒づいた。


でも・・・???なにやら、変。胡蝶は視線を感じた。

世子様が、私を見てる?そんなわけが・・・

いつも、私の書くものをじっと見ていらっしゃるもの・・・


見てはいけないと思いながらも、書き終わったとき、恐る恐る眼を上げてみると・・・

目が合ってしまった・・・

お仕置き


「も、申し訳ございません。」

慌てて筆を置いて、胡蝶は平伏した。




2013年06月09日10:23
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