「屋根部屋の皇太子2次小説」
それぞれの時

それぞれの時 イ・ガク 2

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チサンのおむらいす店に一人の若者が入ってきた。

「あ、すみませ~ん。今日はもうおしまいなんですよ。」
チサンが手を拭き拭き出てきた。

「なんだ、マンボ兄じゃないですか。おつとめは?」

「うん。ちょっと話があって、もうあがってきた。」

「そうなんですか。ちょっと待ってくださいね。閉めちゃいますから。」


「あ~あ、久しぶりにコーヒーが飲みたいなぁ。いくらなんでも、コーヒーはないもんなぁ~。」


壬午軍乱(1882年6月)以後、韓米修好条約によって米国の公使が、コーヒーを持ち込み、高宗と王妃に献上しました。当時はコーヒーの事をカベ茶(加比茶)と言い、韓国で一番始めに味わった人は高宗と閔妃でした。 韓国の茶文化うら話~韓国でのコーヒーの歴史より


「・・・実はね、マンボ兄。清国にいるある国の大使がコーヒーを持ち込んで飲んでいるという情報があるんですよ。ふふふ・・・。もし本当だったら、取り寄せますから・・・。」

「マジか?チサンは本当に地獄耳だなぁ・・・。

チサン。俺は無理に出仕しろとは言わないから、その代わり、助けて欲しいんだ。
やっぱりこういうことはお前じゃなきゃダメだよ。」

「どうしたんですか?」

「実はな、さっき、世子様に呼び出されて・・・」


   -------

数時間前  世子の部屋


「お呼びでございますか。」

「ん。マンボか。入れ。」

イ・ガクはまだ食事の最中らしく、給仕の女官が数人仕えていた。

「お前達は下がってよいぞ・・・」


女官達が下がっていくのを見届けてからイ・ガクはため息をつくようにつぶやいた。


「はぁ~。あの者たちに年中取り囲まれていては、食べる気も失せる・・・。

ああ、スマンな、マンボ。呼び立てて。
特に用事ではないんだ。」


世子の膳を見ると、ほとんど箸をつけていない。

朝鮮に戻ってからのイ・ガクは明らかにやつれていた。


「世子様。お食事が進みませんか?」

「うむ。別に腹が痛いわけではない。心配せずとも良い。

そうだ、マンボから言うてくれぬか。
膳の品数をもっと減らせと。こんなに一人では食べきれぬ。無駄遣いをするなと。
女官達に何度言っても埒があかぬのだ。」

「かしこまりました。」


仕方がないように少し膳のものをつまむと、イ・ガクはもう箸を置いた。


「・・・マンボよ、あのときの海鮮鍋は美味であったな・・・」


そうつぶやくと、イ・ガクはつと顔を背けた・・・。


・・・涙が、イ・ガクの頬を流れて落ちた。


世子様が泣いておられる・・・。

われらの前では涙など見せたことがないのに・・・。


マンボは思わず顔を伏せた。



「・・・口やかましいやつであったが、料理の腕は天晴れであった・・・。

なにやら、静なのも淋しいものだな・・・。」


イ・ガクはそっと涙をぬぐうと、声を上げた。

「たれか、ある!」

「お呼びでございますか。」

「もうよい。膳を下げよ。」

「かしこまりました。」


「マンボよ、もう少し付き合え。庭を歩こうぞ。」



芙蓉池をそぞろ歩きながら、イ・ガクは水面に広がる波紋を見詰め一人想いに耽っている。

プヨン・・・。さぞ無念であったろう。

そなたの想いに気がついていれば・・・。

いや、自分の気持ちに気がついていれば・・・、あのような目に合わさずとも済んだかもしれぬのに。

私も、そなたのことが好きだったのだ。いまさら気づくとは、愚かなことだ。

そなたの顔が見たくて、いつも謎賭けを考えていた・・・。

そなたの困った顔がかわいくて・・・。

そなたとの会話が楽しくて、愉快で・・・、打てば響くような才気が快かった・・・。

プヨンよ・・・。

私は三百年後の世界へ飛んで、そなたの生まれ変わりの女人と出逢ったのだぞ。

そなたが引き合わせてくれたのだろう?

パク・ハというてな、そなたとは違い口やかましくて、愚かで、乱暴で・・・困ったやつだった。

しかし、そなたと同じく心は清らかで、情けがあって、可憐であった。

泣き虫で・・・、すぐに涙をこぼして・・・、働き者で・・・

元気でおるだろうか・・・パク・ハや・・・



数歩後を黙って付いていきながら、パク・ハさんのことを考えているのだな、とマンボは思った。


イ・ガクはふと歩みを止めると、マンボのほうに向き直った。


「マンボよ。頼みがあるのだが。」

「ははっ。」

「プヨンの墓に詣でて花を供えて欲しい。

私の命を救ってくれた者ゆえ、自身で参りたいのだが、罪人の一族であるからそうもいかぬ。

世子とはままならぬもの・・・。

それから、ファヨンのところへ人を遣わし、しばらくは身を慎んでプヨンの菩提を弔えと。

いずれ私の世継ぎが誕生した暁には特赦で許そうほどに、と、伝えよ。」

しかし、マンボは俯いたまま返事をしない・・・

「マンボよ、どうした。返事は・・・?」


膝をつき思い切って話しかけた。

「世子様。申し上げたいことがございます。」

「なんだ。」

「私の口を出すことではないと存じますが・・・
妃をお迎えになるのが気が進まないのであるならば、せめてお側に使える女人をお選びになってはいかがでしょうか。」

「誰ぞに頼まれたか?」

「いえ、そうではありませぬ。
ヨンスル兄もチサンも心配しておりまする。
そのようにおやつれになられて、我らがおりながら、プヨン様にもパク・ハ様にも申し訳が立ちませぬ。

それに・・・、世子様のお怒りは深いと存じますが、お許しになるつもりがないのであれば、そのように希望を抱かせる言葉はファヨン様に酷かと存じます。」


「申し訳が立たぬ・・・か。 そうか・・・」


「心配かけてすまぬな。
父上にも言われておるのだ。妃を迎えよと。

私のわがままなのだ。わかっている・・・。」


「そちたちが探してはくれぬか。

両班身分で、父親が早く死んで、男兄弟がいなくて、姉がすでに嫁いで、暮らしに困窮している妹娘が居ったら、その娘を宮中に出仕させよ。

特に言わずとも良い。

私の目に付くところにおいて置けばよい。気に入れば、側に置くことにする・・・。」



   -------
  
「・・・というわけなんだ。」

「・・・はあ・・・。
世子様、また無理難題を・・・さらっと・・・。

パク・ハ姉以外の女はいらんといっているのと同じじゃないか。」

「だろ?そりゃ、探せば一人や二人はいるかもしれないが、・・・」

「世子様の場合、前提として、美人です・・・よねぇ?」

「もちろん!!!めんくいですから・・・。
な、わかるだろう?チサンがいないと無理だって事・・・。」


「世子様、パク・ハ姉に操を立てているのかなぁ。女好きのくせに・・・」

「食もあまり進まれないから、やつれてしまって・・・。
もう、こうなったら、実力行使するしかないと思ってな。」

「わかりました。

善は急げだ。さっそくヨンスル兄のところへ行きましょうよ。
我らが何とかしないと、ね。」

二人はがしっと手を握り合って、ニヤリと微笑んだ。


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